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[社会福祉学科1年]「朝日訴訟」講演会が行われました。(12/24)

2013年12月25日お知らせ

「朝日訴訟」講演会が行われました。


授業の写真平成25年12月24日(火)、社会福祉学科1年生の「低所得者に対する支援と生活保護制度」(武田英樹准教授)の授業の一環で、「朝日訴訟」講演会が行われました。


朝日訴訟とは


1913年津山市で4人兄弟の末子として生まれた朝日茂さんは、肺結核を患い1942年に岡山県早島町の療養所に入院。
厚生大臣の設定した生活扶助基準で定められた最高金額の月600円の日用品費の生活扶助と現物による全給付の給食付医療扶助とを受けていました。

ところが、津山市社会福祉事務所が朝日茂さんの実兄に医療費の一部負担を命じたことにより、朝日さんは実兄より毎月1,500円の送金を受けることに。
これにより津山市社会福祉事務所長は、朝日さんの月額600円の生活扶助を打ち切り、1,500円の送金金額から日用品費(600円)を控除した残金900円を医療費の一部として負担させる旨の保護変更決定をしました。

この決定が岡山県知事に対する不服の申し立て及び厚生大臣に対する不服の申し立てにおいても是認されるにいたったため、朝日さんは、厚生大臣を被告として、600円の基準金額が生活保護法の規定する「健康で文化的な最低限度の生活を営む」には不十分だとして、同大臣の不服申立却下裁決の取り消しを求める旨の訴訟を提起しました。

(当時の生活保護基準は、肌着なら2年に1枚しか購入できないほどの金額で、生活保護費が少なすぎて必要な栄養すら摂ることができませんでした。)

この訴訟は1964年に朝日さんが死亡したことにより訴訟終了となりましたが、これにより生活保護制度が国からの恩恵ではなく国民の権利であることが改めて確認され、そして、国民の中で「人間らしさとは」「人間の尊厳とは」という議論の高まりが見られ、生活保護基準の引き上げや生活保護行政のあり方について改善が見られるようになりました。

「人間裁判」とも言われたこの一連の「朝日訴訟」は、その後の日本の社会保障制度の在り方に大きな影響を与えています。


元津山市社会福祉事務所 山本節子氏を講師としてお迎えしました。


授業の写真授業の冒頭では、武田先生より「朝日訴訟の概要」について説明があった後、約30分の記録映画を鑑賞。

続けて、朝日茂さんが訴訟を起こした当時(昭和30年代頃)津山市社会福祉事務所で朝日さんへの生活保護費の支給などを担当されていた山本節子氏を講師としてお招きし、お話いただきました。

授業の写真山本さんは昭和33年に津山市役所に就職し、ケースワーカーとして生活保護費の支給等の業務に携わることになりました。
この時に担当されていた方の一人が、31歳で肺結核を患い早島療養所に入院している朝日茂さんでした。

山本さんは朝日さんに毎月600円の生活保護費を送金。
朝日さんからはいつも丁寧なお礼の手紙をいただき、山本さんはその手紙から朝日さんの人柄を感じ、そして、字を書くことの大切さを学んだそうです。

その後朝日さんがこの600円を不服とし、岡山県知事及び厚生大臣に訴訟を起こすことになりますが、山本さんは朝日さんの手紙から感じられる人柄もあり、初めはこの訴訟が“よくわからなかった”そうです。

後に朝日さんは裁判に一度は勝訴しましたが、厚生大臣側が控訴し、その裁判中の1964年に52歳で朝日さんは亡くなられました。
当時の裁判官は朝日さんを「国の社会福祉制度の闘士だが、静かで穏やかな闘士だった」と話されたそうです。


山本さんは計12年間生活保護に関わり、たくさんの人に寄り添って来られました。
その12年間の中でも、朝日さんのこの訴訟が“生きていく上での大きな方向付けをしてくれた。朝日さんのお陰で今日の社会保障制度がある”と言われます。
そして、
「ケースワーカーの全ての仕事は「生活保護」がもとになっています。「生活保護」とは与える福祉ではなく、自分で立ち上がるための制度です。自分で立ち上がるのを支えることがケースワーカーの仕事であり、難しいけどやりがいのある仕事です。
人が制度を繋げていく。その繋げ方によって、良くも悪くもなります。
みなさんはこれから福祉の資格を取り、色んなところで仕事をしていくことになりますが、自分の考えを持てるよう知力を養ってほしい」
と話されました。


社会福祉士をめざす学生たちにとって今回の講演は非常に興味深く、社会福祉学科1年 大谷さんは、「“与える福祉ではなくて自分で立ち上がるための福祉”という考えに感動しました」と話しました。
今回学生たちが感じたことや得た知識は、将来いきいきとしたまちづくりの一助となることでしょう。

山本先生、貴重なお話をありがとうございました。

:-)