第11回「美作子どもの国語力研究会」が開催されました.。(8/10)

2013年08月22日児童学科

第11回「美作子どもの国語力研究会」が開催されました


美作子どもの国語力研究会の写真先日8月10日(土)に美作大学・美作大学短期大学部にて、「第11回美作子どもの国語力研究会」が開催されました。

美作地域の小学校の先生を中心に80名以上の方が出席。休みの日にも関わらず、大勢の方が集まり、熱心に講義を受講していました。

本学からは、夏休みの最中、小学校教員を目指す、児童学科の学生15人が参加しました。

今回は2つの実践発表と、岡山大学大学院教育研究科名誉教授 菅原 稔 先生の特別講演が行われました。


実践発表 6年生文学教材「きつねの窓」の授業


松井先生の写真まずはじめの報告は、真庭市立河内小学校松井 成人先生 の小学校6年生を対象にした、「きつねの窓」(安房直子作)の実践発表でした。

松井先生は、「主体的に取り組む児童の育成」を研究テーマとし、国語科を中心に個人的に取り組んだ校内研究についての実践事例を発表していただきました。

特に限られた時間のなかで一定の指導成果を挙げるため、効率のよい授業の流れを作るための準備や工夫が必要であることを述べられました。

物語に出てくる花やものを、実物や写真を掲出して理解しやすくしたり、書くところを少なくするためコピーを配布し時間効率を上げつつ、しかしながらその上下にはしっかりとメモを書き込めるスペースが設けられており、子どもたち自身がしっかりと考えをまとめる力をつけるための工夫がされていました。

教材研究は、はじめ時間や手間がかかり大変ですが、その労力を越えて構成された授業には、効率に加え、教材など新たな創意工夫を組み込み、大きな指導成果をあげることが出来たと松井先生は報告くださいました。

そして本学の学生に向けて、教材研究にしっかり取り組んでくださいとアドバイスくださいました。教材研究を行うことで指導力が身につき、限られた時間の中で、自分なりの授業方法と指導効果を生み出すことが出来るようになりますと未来の先生たちに暖かい言葉をかけてくれました。


実践発表 3年生文学教材「つり橋わたれ」の授業


山野先生の写真
2つめの報告は、津山市立向陽小学校山野 みさこ先生「つりばしわたれ」(長崎源之助作)の実践発表でした。

こちらは、実際の授業の様子を再現することで、どのような工夫点、課題、それを解決し指導していくのかを、体感できる型式での発表でした。

前半は授業の狙いや、挿絵や写真などを用い、物語の順序を子どもたちに考え、並び替えることであらすじや登場人物の子どもたちの気持ちを考える工夫など、指導においての狙いや実践方法などを説明してくださいました。

次に後半では、実際に会場を教室、出席のみなさんを児童として、体験授業を行ってくださいました。体験授業の良いところは、山野先生の授業を、直接見ることが出来ること、そして会場の先生方や学生自身が児童の役割を持つことで、児童の気持ちや視点から授業を体感し、その工夫点を改めて見直すこどが出来ることだと思いました。

山野先生は、今回の発表以外にも時間内で触れることが出来なかったたくさんの工夫、考えなどが配布された冊子に掲載されており、参考になる話が盛りだくさんの発表でした。

発表のあと、山野先生からは、学生のみなさんに、これだ、と思ったことを、とことん突き進んでやってみてください。全力で取り組むことが力をつけるうえでも大切なことです、と力強いエールを頂きました。


講演「教育実践の先達に学ぶ −今を生きる東井義雄−」


研究会の後半は、講演会です。

このたびは、岡山大学大学院教育研究科名誉教授 菅原 稔先生にお越しいただき、「教育実践の先達に学ぶ −今を生きる東井義雄−」の講演を行っていただきました。

とても面白く、気持ちの奥深くに届くような温かい内容で、あっという間に時間がすぎていきました。



作文指導は、宝物づくり


菅原先生の写真今回の講演で、菅原先生は、東井義雄先生の著書や研究を提示しつつ、子どもへの国語指導のありかたから今の教育行政まで幅広くお話を頂きました。
そして国語教育で大切なこととして、東井先生「いのちの思想」がその源流にあるとお話くださっています。

「東の斉藤喜博、西の東井義雄」と言われるくらい教育界では、(戦後)昭和中期における教育実践家として著名なお二人ですが、このたびの講演にて菅原先生は、東井先生の教育研究を踏まえてみなさんに問いかけます。

「読み返した子どものころの作文が宝物のように感じませんか?」

ふるさとを否定して都会に出て行くことを推奨するような当時の(いえ、今もあるかも知れません)教育指導に疑問に感じ、故郷但馬に残り続け自身の教育研究を発表続けた東井先生の姿勢に改めて、感じ入るものがあると菅井先生はお話しくださいました。

田舎には何もない、という発想は、作文に書く内容が無い、ということと似ています。日々生きていくことを見つめなおせば、全く同じ日はないことに気づくはずです。
彼の生涯かけて研究し、たどりついた「いのちの思想」。教育思想を「いのち」の概念で捉えた東井先生の考え。作文指導に置き換えても共感を覚えます。

いのちを文字というかたちで綴った作文、宝物として大切にもっている方、きっと多いでしょう。

作文指導は、宝物を創ることにつながっている。そう考えると、なぜだか胸の奥が熱い気持ちになりました。


今を生きる、東井義雄先生の教育


研究会の冊子の写真
学習指導要領の平成元年の改定にて、「あたらしい学力観」を示したことは近年の教育行政においてとても大きかったできごとだと菅原先生は講演の中でおっしゃっていました。そしてそこには東井先生の考えが脈づいていることをお話くださいました。

あたらしい学力観とは、「自ら学ぶ意欲や,思考力,判断力,表現力などを学力の基本とする学力観」としており、後に(平成8年に)提言された「生きる力」(健康や体力、協調性,豊かな人間性、主体的に判断・行動できる資質や能力等の総合的な力(*こちらで簡略表現しています))と組み合わせ、「21世紀の学力観」とも言われています。

この内容こそまさしく「いのち」の思想ではないでしょうか。

東井先生の教育が今に生きているのです。

この講演では、先生ご自身の体験談が多く織り交ぜられて、楽しくもわかりやすく、教育指導のお話をしてくださいました。

なお、余談ながら、菅原先生は、実はこの大学のそばにご本家のお墓があり、幼少の頃のこの場所のことをとても覚えていました。懐かしい思い出たくさんのこの地にある美作大学でお話すること、とても楽しみにしていましたとおっしゃってくださいました。

涙を浮かべる学生もおり、本当に学ぶことが多い内容の講演でした。



授業で受けた感動を次の世代に伝える役割を担うみなさんのための研究会


質問をする学生たちの写真この美作子どもの国語力研究会の特長は、国語の授業を担当して長らくの経験豊富な方のお話やアドバイスと、教員となって間もない先生方の創意工夫によって行われる授業の実践報告があり、新しい世代からベテランの教員の方まで幅広く、ともに学ぶことのできる会という点が挙げられます。

そしてその教育指導のバックヤード(背景)や先生方自身の気持ちも知ることができます。

子どもだったあの頃、大切な時間をもらっていたんだなあ、先生は授業の背景でこんな準備をしてくれてたんだ、と感謝の気持ちを覚えつつ、その気持ちを次に伝え育てる役割として、心新たにできたのではなかったでしょうか。

実践発表、講演の先生のみなさま、研究会のみなさん、参加者のみなさん、本学の学生のみなさん、良い時間を一緒にすごせたことをうれしく思います。


ありがとうございました。



:-)

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