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児童学科、アウシュビッツの歴史学び人権意識を高める
2021年10月15日 児童学科
10月2日(土曜)、大学児童学科1~4年生が、アウシュビッツ・ミュージアム公認ガイドの中谷剛氏による「ホロコースト教育-アウシュビッツ博物館の役割-」を題目とした講演を聴講しました。
この度は、新型コロナ感染対策の為学年で教室を分散し、中谷氏にはポーランドのオシフィエンティム市よりオンラインにてご講演いただきました。
この講演会は、将来、人に関わる職業に就く学生たちの人権意識を高めることを目的に開催されました。
中谷氏はアウシュビッツ・ミュージアム公認ガイドになるきっかけとして、小学校6年生の時に、父の転勤による転校で経験した疎外感、そして、小学校の時に聞いた学者さんの講演会の中で「ヨーロッパでは昔、よそ者という理由だけで何百万人もの人を殺してしまった歴史がある」という言葉、それらが、日本人唯一の公認ガイドをすることになった原点であると話されました。
また、大学時代にポーランド旅行へ行き、現地の学生たちの自由を渇望する状態に驚愕したこと。ベルリンの壁崩壊後に再訪した際には、自由を満喫しているはずのポーランド人が落胆している様子を見て、その理由を探りたいという思いで1991年からポーランドに移住したこと。そして、ワルシャワのレストランで働いたあと、通訳の仕事を行い、1997年にアウシュビッツ博物館のガイドの仕事を始めることになった経緯等を説明されました。
続いて、アウシュビッツ強制収容所では150万人の人が殺戮され、その犠牲者の多くはユダヤ人だが、中にはロマシンディの人やLGBT、障がい者などの少数者も含まれていたという事実を説明されました。
また中谷氏は、「人間は不安にさらされると、排他的になり大衆迎合主義が跋扈してしまい、知らないうちに加害者になってしまいます。また、歴史的に何か大きなことが行われる時には、5割の何も考えない人がいます。その5割はただの傍観者に過ぎませんが、民主主義国家ではその5割が国を動かしてしまうのです。無知ということが恐ろしいことも歴史を知るうえで学んでほしいと思います。」と訴えました。
最後に学生たちに、「ヨーロッパでは人権に関しては『かつての過ちを繰り返してはいけない。過ちを認めよう。間違えたら謝罪しよう』という意識が強くあります。教育に携わる人は、一人二人の少数派の意見を聞く日を増やしてほしいです。そして、世界の動きを知りながら、目の前の子どもたちの教育に活かしてほしいと思います。」とメッセージを送りました。
講演後の質疑応答では「ホロコーストについてもっと勉強したいのですが何を読んだらいいですか。また小学生に教える時にどんなことを教えたらいいですか」との質問があり、「13歳以下は恐怖や差別についての感情が発達していない。映画を見せるといいのではないか」と答えられていました。
その他、積極的に質問をする学生の姿が見られ、中谷氏は一つ一つの質問に丁寧に答えていました。
- 講演を聴講した学生のコメント
「ユダヤ人迫害のことだけではなく、自分が教員になった際に、どのように人権教育をしていくべきかを深く考えるきっかけとなりました。また、多数派にいるだけではなく、そして、傍観者になるのではなく、自分の考えをしっかりもって行動し、教育をしていきたいと思いました。」
「人を傷付けるのも成長させるのも“人”であるということを強く感じました。人権問題やいじめ等の問題には全て人が関わっています。今後、教師として、これからの社会を生きる子どもたちのために伝える努力を怠らないよう行動したいと思います。」
「想像を超える話で、とても胸が痛くなりました。児童でも少数派の意見があれば、そこにもしっかり向き合えるような教師になりたいと思いました。」
※アウシュビッツ博物館とは
ポーランド南部のスロヴァキアとの国境近くにあるオシフィエンチムにある博物館。第二次世界大戦中、ユダヤ人の大量虐殺が行われたアウシュビッツ強制収容所は、戦後、アウシュビッツ博物館として保存され、歴史の中で起こってしまったことを伝え続けています。